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シトシトと。
泥の中に雨水が落ちてくるような。
一定のリズムの中に。
ベタリと、泥の上を裸足の何かがやってくる。
シトシトと、近付いてくる。
「……ん?」
背筋がスースーする。
藍がまず初めに思ったのはそのことだった。
背中に意識をやればじっとりと湿っている。
寝汗。
寒気。
風邪でもひいたのだろうか。
それにしては、意識がはっきりしている。
そこまで考えてから、ふと藍は我に返った。
ここはどこだ?
辺りに目をやる。
ゴツゴツとした灰色の岩。
「有明っ!」
藍はそう叫んで飛び起きた。
自分は乙姫様に有明と同じ檻に入れられたはずだ。
振り返れば、部屋の隅に座っている有明を見つけた。
茶色いフワフワの髪が沈んでいる。


