不滅の妖怪を御存じ?




「一つ、いいことを教えてあげる。」


その言葉が降ってくると同時に、ぐいと腕を引かれた。
乙姫様の力は見た目からは考えられないほどに強い。

ぐいぐいと反発する暇もないくらい勢いよく引っ張られる。
藍は為す術なく引きずられる。


「あなた、目が覚めたときにいた部屋、覚えてる?そこに何があったかしら?」

「え、えっと。」


答える前にガシャァンッと音がして身体を投げ飛ばされる。
ガガッと固い地面に当たり腰や肩がジンジンと痛んだ。

だが、その衝撃のおかげか思い出した。

目を覚ました時。
きらびやかな部屋にあったもの。

写真だ。
アテルイから藍まで続く人々の、写真や似顔絵。


「弓月はね、あなたたち一族との思い出を残したくないのよ。」


乙姫の言葉が頭に響く。

あぁ、だから弓月は燃やしていたのか。
写真も、ランドセルも、本も。
私の使い終わったもの全て。

頭を打ったせいかグラグラする。

藍は半ば朦朧とした意識で考えた。

どうして、弓月は思い出を残したくないのか。