「私は母がいないのであまり自信を持って言えないですけど、あなたがやるべきことはお金をあげることじゃないです。」
「……じゃあ、何なのかしら。」
「愛してあげてください。」
何をこっぱずかしいことを言っているんだ私は。
言ってから藍は急に恥ずかしくなった。
けれどまぁ、これ以上に適切な言葉が思いつかなかったのだから仕方ない。
そう思うことにした。
「子供が親に求めることはそれだけですよ。」
そう藍が言えば、乙姫の目がすっと細められた。
「……あなたにはまだ分からないでしょうね。」
降ってきた冷たい乙姫の言葉。
確かに、と藍は思う。
藍は子供を産んだことも育てたこともない。
お金をあげることが最大の愛情表現だと言われて反論出来るほどの経験がない。
それでも、有明が欲しいのはお金じゃないんだろうな、と思った。


