「そりゃあ五百人も育てたのは立派だと思いますよ。子供一人育てるのも大変なのに。それに一人一人の名前覚えているのもすごいと思います。私なんて同じクラスの40人さえも覚えられないのに。名前も皆天気に関するように統一感を持たせていて面白いです。乙姫様って形から入るタイプなんですね。そもそも天気に関する言葉が五百もあることに私はビックリです。」


藍はノンブレスで言い切った。
かなりキツかったが、乙姫は相変わらず黙ったままだ。

鋭い爪を振り下ろしてくる様子はない。


「あなたの努力はすごいです。とても美しいのに、たくさんの苦労をしてきたのでしょう。それは尊敬します。けれど、さっきの有明に対するあなたの態度はひどいと思います。」


藍がそう言った途端、乙姫の目が変わった気がした。


「……あの子は、生まれたときから茶色い髪と目だったの。」


美しい声で乙姫はそう言い、不敵に微笑んだ。
美女の微笑みは怖いということを藍は初めて知った。