「弓月がアテルイ一族の守りを買ってでたんだよ!」
はぁ?と妖怪一同がポカンとした顔をする。
どうだ、と言わんばかりのろくろ首の顔をマジマジと見る。
「……守りってえのは、アテルイ一族を生かすってことかえ?」
「なして人間生かすんだ?」
「殺しはせんのかえ?」
次々と投げかけられる質問。
ろくろ首はムムムと難しい顔をする。
実は彼女にも、天狗の族長弓月の真意は分からなかったのである。
そもそも、妖怪は人間に好意など微塵も抱いていない。
人間など滅んでしまえばいい、というのが本音だ。
妖怪たちの住処である森や川や海で好き勝手な行動をする。
加減を知らない。
いつか、住む場所を全て人間たちにメチャクチャにされるかもしれない。
妖怪たちは本能でそのことを感じ取っていた。
だからこそ、早めに人間たちを消してしまいたい。
『朝廷軍と戦うんだ。おめえらが協力してくれたら、九木のおめえらへの攻撃を半分は防いでやるぞ。』
アテルイのその誘いに天狗以外の妖怪たちが快く承諾したのも単純な理由だった。
人間をたくさん殺せるから。
それだけ。


