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802年。
平安時代初期。
鳴くようぐいす平安京。
都では蝦夷の族長、アテルイが斬殺されたという話が飛び交っていた。
征夷大将軍坂上田村麻呂のお手柄だと。
話が人づてに次々と回る京の都のさらに北。
東北。
アテルイがしばしば足を運んでいた森の中では、妖怪たちが大騒ぎをしていた。
「大変だ大変だ!」
「なんだいろくろ首。うるさいったらありゃしないねぇ。」
ドタドタと走り込んできたろくろ首に二口女は顔をしかめる。
騒ぎを聞きつけて他の妖怪たちもわらわらと集まり出してきた。
「なんでえ、何があったんだい。」
「天狗が!弓月が!」
「天狗の新しい族長かい?」
ろくろ首の言葉に妖怪たちはパチクリと目を瞬かせる。
のっぺらぼうは目がないので首を傾げていた。
そうして、ろくろ首は皆の驚いた顔が見たくてしょうがないというように、一気にまくしたてた。


