「俺の、妖力が小さいからか?」
静かに、有明は聞いた。
平静を装っているのがバレバレだ。
声から必死で感情を押し殺しているのが伝わってくる。
「それもあります。けれど、一番はやはりその茶色い目と髪ですね。」
ギュッと。
握りしめた有明の手が震えているのが見えた。
乙姫の言葉を聞きながら、藍は「ん?」と眉を寄せる。
何が問題なのだろう。
茶色い目と髪。
妖怪なんだから妖力が小さい方がよっぽど問題なのではないか。
そんな藍の疑問もお構いなしに乙姫はどんどん話を続ける。
「竜宮城はお客様をおもてなしする場所。最高に美しい場所で、美味しい料理と美しい踊り子がいるべき場所です。そこに、あなたは相応しくない。」
あなたの茶色い目と、茶色い髪は、美しくない。
ゆらりと。
乙姫を見つめる有明の目が揺らいだ。


