「馬鹿だな。いくら母さんの力を受け継いでるからといって、お前の妖力じゃ力のコントロールも出来ないだろ。」
「そもそもあんたの茶色い目と髪をどうにかしないと人前にも出せないよ。」
牢屋のような檻があった。
積み上げられた岩の隙間にある牢屋。
鉄格子の向こうには頬を腫らした有明がいた。
格子を挟んで外側には二人の男女がいる。
有明は監禁されていたのか。
あの三人は家族のはずなのに。
藍は目の前の光景に目を疑う。
「あんたはここで大人しくしてればいいのよ。欲しいものは全部母様が買ってくれるじゃない。」
豊かな黒髪の有明の姉であろう女性がそう言うと、有明がカッと目を見開き口を開ける。
だが、有明が何か言う前に別の声が入った。
「あなたたち。喧嘩はそこまでにしなさい。」
凛とした、上品な声。
自信に満ち溢れた者だけが出せる不思議な威厳のある声。
乙姫様だ。
考える必要もなかった。


