「は?千秋?」
「何、その反応。」
「意外だ。」
「何でもいいからさっさと行くよ。」
ふいと顔を逸らし千秋は進んでいく。
桜も一緒に足を進める。
「紫月と佳那子は?」
「先に行ったよ。」
「……女子ってすごいな。」
九木の妖力が膨大になったというこの状況で。
こんな先も見えない暗い洞窟で。
不安はないのだろうか。
そんなことを桜が眉を寄せて考えていたら。
「桜って考え過ぎるときがあるよね。」
唐突に、ズバリと千秋がそう言い放った。
「ふぁ?」と桜は思わず口を半開きにしてしまう。
遠慮のない奴だとは思っていたがここまでズケズケ言うとは。
てかどういう意味だ。
桜がめまぐるしく考えていることなどちっとも気にせず、さらに千秋は言葉を重ねる。
「さっきも不安そうな顔してモタモタしてたし。馬鹿なの?」
「お、おう。」
「負けるわけないでしょ、僕らが。」
「お、おう。」
あまりにも堂々と貶されたので桜はもう「お、おう。」以外言えなかった。
負けるわけない、なんて。
どこまでも偉そうに宣言した千秋に、不覚にも桜は吹き出してしまった。


