カチリと千秋が手にしていた懐中電灯を付ければ、道が照らされる。
本当に土を掘っただけのような、舗装も何もされてない道が、ずっと奥まで続いていた。
「じゃあ、行ってきます。」
「あぁ。しっかりやりなさい。」
千秋は父親にそれだけ言うとひょいとその穴に飛び込む。
あまりのあっさりした別れに桜は面食らう。
これが最後になるかもしれないのに。
「さっさとしてよ。」
くぐもって聞こえる千秋の素っ気ない言葉に佳那子と紫月も次々と穴に入ってゆく。
残された桜も慌てて千秋の父に一礼して穴に入った。
ぐちゃりと。
中に入った瞬間、足の裏に変な感触。
泥が水気が多くてぐちゃぐちゃなのだろうか。
桜は一瞬顔をしかめる。
すると、目の端に白い光がチロチロ見えた。
出発が遅れた桜を誰かが待っていてくれたのか。
千秋は後ろなんか気にせず先に行きそうだから佳那子か紫月だろうな。
これ以上待たせるのも悪いと思い桜は早足で歩く。
しかし、近づくにつれ見えてきたのは意外な人物だった。


