「いくつも道が分かれている地点があるが、全部右に行けば竹内家に着く。そこで保護してもらいなさい。わたしたちと竹内家は敵対関係だが、この非常事態だ。向こうも断ることはあるまい。」
「竹内家?」
ここで千秋の父の言葉に反応したのは桜と佳那子だった。
キョトンとする2人に紫月が淡々と説明する。
「竹内家には壱与が封印されていて、彼女の結界により妖怪は敷地内に入れないようです。」
「ていうかこの話したとき桜もいたはずだよね。」
千秋の呆れたような目を桜は笑って受け流す。
納得している三人の横で佳那子一人だけが困惑している。
「え、え?壱与?」
「今の牛木は壱与だそうです。」
「そうなの!?」
「牛木ほどの妖力の結界なら、今の九木でも竹内家の敷地内に入れないでしょう。」
佳那子と紫月の話し声を聞きながら桜と千秋は箪笥を動かす。
むっとカビ臭い匂いが鼻についた。
抜け道だ。
ぽかりと空いた空洞。
中は暗く、数m先も見えない。


