「おぉ、桜くん、来たか。」
こぢんまりとした部屋では伊勢千秋の父が穏やかな顔で出迎えてくれた。
中にはすでに佳那子と紫月と千秋がいた。
「じゃあこれで継承者は全員揃ったな。」
パン、と千秋の父が手を叩き、四人の顔を見つめる。
「今、九木はかつてない程の妖力を持っている。正直に言うと、鬼道学院が狙われたらすぐにやられるだろう。」
出入り口に貼った封じの札など九木の前では意味を成さない。
「そこの箪笥を動かせば抜け道がある。君たちのやるべきことは生き延びることだ。継承者の血を途絶えさせてはいけない。」
物が壊れたら直せばいい。
鬼道学院が壊されたらまた最初から始めればいい。
けれど一度継承者の血が途絶えてしまったら、もう二度と受け継がれてきたものは戻らない。


