⌘
カンカンカンカン、と不安を煽るような甲高い鐘の音が鳴り響く。
廊下ではたくさんの生徒が行き交い情報を求めているのであろう。
継承者専用の廊下をヒタヒタと歩く男がいた。
石上桜だ。
彼が歩く廊下は普通の廊下とは違い恐ろしいほどしんとしている。
静か過ぎる。
緊急時であることを忘れてしまいそうだ。
『東口は二十五番まで封鎖終わりました。』
『南口は十九番まで封鎖終わりました。』
次々と流れてくる放送は桜の耳を通り抜けてゆく。
彼の頭にはただただ不安ばかりあった。
九木がダイダラボッチを食べた。
つまり、ダイダラボッチの妖力は全て九木に取り込まれた。
元々現時点で一番大きな妖力を持っていた九木が、さらに妖力を大きくした。
「……まずいな。」
そんなことを考えているうちに桜はいつの間にか目的の場所に着いていた。
閉じられた襖。
表面には風神と雷神が描かれており、ゾッとするような目つきで桜を見つめている。
ある程度の年月が経って茶色く変色しているというのに、その目力は健在だ。
ふっと一つ息を吐き、襖を開く。


