「私の娘たちです。紹介しますね。」
「へ?」
乙姫のその言葉に驚いた藍は料理を運んできた人たちをもう一度見る。
確かに皆耳がヒレのように広がっていた。
豊かな黒髪も、乙姫に負けず劣らず美しい。
「右から黎明、暁、東雲、曙、青天、炎天です。」
「……天気の名前をつけてるんですね。」
「そうなんです。よく気付きましたね。」
フフフ、と笑う乙姫はどこか艶かしい。
六人姉妹は黒い瞳と黒い髪と耳の形だけは全く一緒だったが、あとは少しずつ違っていた。
鼻が小さい人もいれば、唇がぽてっとしている人もいる。
違いはあるけれど、全員が美人の部類に入るのは間違いないだろう。
「先ほど藍さんをこの部屋までお連れしたのも私の息子で、秋天といいます。」
どうやら先ほどのイケメンは秋天というらしい。
乙姫様は自分の子供に空や天気に関わる名前をつけているようだ。
竜宮城といえば海というイメージだが、空に憧れでもあるのだろうか。


