「この度は私の息子がご迷惑をおかけいたしまして。」
女性の声に藍はハッと我にかえる。
慌ててお辞儀をすれば、クスリと相手が笑った気配がした。
「私は乙姫と申します。ここ、竜宮城の責任者です。」
乙姫。
浦島太郎の、あの乙姫だろうか、と藍は思う。
乙姫が少し動く度に豊かな黒髪がふわりと揺れ動く。
そこで、乙姫の耳がヒレのように広がっていることに気付いた。
「すぐに食事を用意させますね。嫌いな食べ物はあります?」
「え、いや、特にないです。」
「そう。」
乙姫がすっと音もなく手を上げると、鮮やかな色の襖が開く。
ぞろぞろとそこから入ってきたのは女の人たち。
これまた美人の。
黒い長い髪に、澄んだ黒い瞳。
手にはおぼんを持っており、そこには海老、蟹、貝の美味しそうな料理が並んでいた。


