不滅の妖怪を御存じ?








白い廊下を歩き連れて来られた先は、これまたなんとも豪華な部屋だった。

いくつもの真珠が天井から吊るされており、壁にはなめらかな色とりどりの布が綺麗に重ねられ淡い模様を描く。
藍はキョロキョロと首を動かし部屋の中を見回す。

これはもう、一つの芸術だ。

その時、部屋の一番奥に女性が一人座っていることに気付いた。


「初めまして、有田藍さん。」


赤く縁取られたぷくりとした唇が動いた。
長い睫毛が持ち上がり、綺麗な黒い瞳がまっすぐに藍を見つめる。


「は、初めまして。」


藍がしどろもどろにそう言うと女性はフッと上品な笑みを浮かべた。


「どうぞ。腰掛けてください。」


女性に促されて、藍は置いてあった座布団に腰かける。
その座布団もまた色とりどりに数種類のクラゲが刺繍されており、座っていいのか一瞬迷ってしまうほど豪華だ。

そうして再び目の前に優雅に腰かける女性を見る。
美人だ。
十二単というのだろうか。
何枚も重ね着をし、髪飾りには真珠やサンゴがふんだんに使われている。

お姫様というほど可愛い雰囲気ではなく、しかし女王様というほど近づきがたい美しさではない。
なんというか、静かで落ち着いた美しさだ。

藍には彼女の美しさを表す適切な表現が思い浮かばなかった。