「お、乙姫様?」
「ええ。」
「え、ここ、竜宮城?」
「そうですよ。」
何を戸惑っているのだと男の美しい顔が不思議がる。
千秋たちと実践訓練をしていたと思ったら竜宮城。
藍にとっては当惑して当然の状況だ。
『俺は竜宮城の城主になる男だ!』
有明のムキになった声を思い出す。
あの妖怪、何めんどくさいことしてくれてんだ、と藍は腹をたてる。
怒りの気持ちのまま男に詰め寄る。
「有明はどこですか?」
「有明ですか。」
一瞬男がキョトンとする。
誰のことだか分からないらしい。
けれどそんな顔さえも様になるのだからイケメンは世界を平和にするな、と藍は思った。
そんな、女性なら誰もが見惚れてしまうような顔をパッと輝かせ男はこう言い放った。
「あぁ、茶色いグズはそんな名前でしたね。」
このイケメンは有明に何か怨みでもあるのか。
藍はただただ驚きの表情で男の顔を見つめるばかりだった。


