ふわりとした髪。
目を細めて笑っている少女。
この写真の少女が、藍の母親に当たる人なのだろう。
まじまじと写真を見る。
その瞬間、部屋の外から声が聞こえた。
「お目覚めになられましたか?」
パリッと張りのいい男性の声だった。
藍は慌てて写真を箱の中に戻し「はい。」と応じた。
「では、開けますね。」
声の主はそう言うやいなや、スパンと襖を開けた。
その先にいた人物。
それはなんとも秀麗な顔立ちの男性だった。
すらりとした顔に大きな黒目。
つやのある黒髪。
ただ一つ、その豊かな黒髪に隠れるようにある耳はまるで魚のヒレのような形をしていた。
有明と同じように。
「今回はわたしの兄弟がご迷惑をおかけいたしまして申し訳ないです。乙姫様が客間でお待ちです。」
ニコリと上品な笑みで笑いかけてくる。
だが藍はその男の笑みなど気にも止めず、全く別のことに頭を働かせていた。


