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「これだからお前はグズって言われるんだよ。」
「ようやく出て行ったと思ったら厄介なもん持ってきて。」
ザワザワ。
ガヤガヤ。
人の声がいくつも聞こえる。
これはなんだろう。
「恥さらしだよ、お前は。」
誰の声なのだろう。
まどろみの中で藍はそう考えた。
ゆっくりと瞼を持ち上げる。
ボンヤリと視界がぼやけていてよく分からない。
「起きたっ。」
「逃げろっ。」
「母様、母様。」
ドタドタと地面が激しく振動する。
それに合わせて藍の身体も振動する。
うっ、と眉をしかめる。
ガンガンと、何故だか頭がとても痛い。
痛みでようやく頭が冴えてきて藍は再び瞼を持ち上げる。
「……なにここ。」
思わず藍は呟いていた。
何故なら、藍がいる場所はまさに豪華絢爛をそのまま表したような場所だった。
ふかふかの布団。
ピンク、白のいくつものサンゴが組み合わされた柱。
鮮やかに深海を泳ぐ魚とひらひらした服を身につけた踊り子が描かれた襖。
淡い水色がキラキラ光る天井には、いくつもの星が散りばめられている。
その星をよく見てみれば、白く淡く輝く真珠だった。


