不滅の妖怪を御存じ?




「おめぇら、九木に森を追い出されたんだってな。」


天狗はむすりと眉を寄せたまま口を閉ざした。
それをいいことに、男はたっぷり生やした髭を動かし言葉を続ける。


「おめぇらは天狗だから住処を空に移しても大した問題ではないんだろうよ。けどなぁ、九木はこれからもおめぇらを追い詰めるぞ。天狗一族の終わりもそう遠くない。」

「……お主に何が分かる。」


地の底から這うような天狗の声。

普通の人間なら身が縮まり慄いてしまうような声だったが、男は全く動じなかった。
それどころか、たっぷり髭を生やした口を大きく曲げ、笑ったのだ。


「だから提案があるんだ。九木がおめえらに手を出せないような契約をしようや。」

「戯言を。」

「正気だ。おめえ、おらの呪術の腕は知ってんだろ。」


男と天狗はしばし互いの目を見つめる。
お互いの腹の底を探り合うように。