「一つは分かってる。アテルイの血を途絶えさせないこと。だからお前は弓月たち妖怪に守られて育ってきた。だけどそれだけじゃ不十分だ。」
首を傾げる藍に構わず有明は一人でどんどん話し出す。
「九木なんていう妖怪の最高峰を抑えつけるためにはまだ何かある。もっと大きな、契約の元となる何かが。」
有明はそこで言葉を切った。
そしてそのまま黙り込む。
ぼんやりとした茶色い瞳を見つめて藍は考える。
アテルイと弓月の契約。
アテルイが生きていたのは800年代だったはずだ。
1200年。
弓月はそんなに長い間生きていたのか。
そして1200年前、彼らはどんな契約を結んだのだろうか。


