不滅の妖怪を御存じ?






「あの文字は不思議でね、今まで何十人と解読しようとしたけど、一人も出来なかったんだって。」

「紫月たち西文家の人に説明してもらえばいいんじゃないの?」

「そーゆー次元の文字じゃないんだよ、あれは。文法も単語も何も無い。だけど読む資格がある人が見れば読める。現に西文の血を引く四歳の子だってあれは読めたんだから。」


四歳。
まだ小学校に上がる前だ。
そのくらいの子が読めるのなんて平仮名くらいだろう。


「えっと、それは。」

「西文家の人にも何で読めるかなんて説明が出来ないんだって。文面を目で追っているだけで無意識のうちに内容が分かってるらしいよ。」

「……それ、けっこうすごいことだね。」

「親から教えてもらうわけでもないらしいから、本当に本能的なものなんだろうね。さすが記録の家系。」


佳那子はそう言って筆を持つ。
墨汁が筆にじんわりと染み込んでゆく。

教室は静まり、三十人もの生徒が半紙に向かって文字を書いている。
ピンと張り詰めた空間。

そんな中、かくっと頭を揺らし有明は居眠りをしていた。