シャーッとメモに汚い有明の字が書かれていく。
「毒、千、時、願」
その四文字がメモの上に現れる。
「この四つが牛木の能力だ。能力を司る部位にこの四つの文字が光り輝くってか、ぼうっと浮き上がるっていうのか?とりあえず、そんな感じで刻まれているんだよ。」
左手に毒、右手に時、目には千、舌には願。
「毒ってのはそのまんま、毒だな。牛木の左手に一瞬でも触ると毒が回って死ぬ。千ってのは千里眼だ。千里先まで見える。」
シャッ、と有明は残り二つの文字を丸で囲む。
先刻までは興味なさそうにしていた伊勢千秋でさえも今は身を乗り出して話に耳を傾けている。
「特徴的なのは時と願だ。牛木は過去に遡れる。それが時だ。だけどこれにはいくつかの制約がある。」
一つ。
牛木自身一人だけで過去に遡ることはできない。
必ず他人と一緒に遡る。
また、他人だけを過去に送ることもできない。
二つ。
過去に遡ったら、未来には戻れない。


