「牛鬼は進化し続けているからその都度能力は変わっていく。レベルアップしていく感じだ。今の代の壱与の能力なら知ってるけど、それ以前のも教えた方がいいのか?」
有明の言葉を藍が説明すれば紫月は頷く。
二人の顔を見ながら藍の胸には不思議な違和感が生まれた。
正体は分からないが、しっくりこない。
「牛鬼の始まりは水だ。海か川、とにかく水がたくさんあるところから生まれた。この前のじじいの教師が言っていた通りで牛の頭に蜘蛛の身体。人を食い殺す。そして牛鬼を殺した者が次の牛鬼となる。」
不死身でなく、不滅。
ふっと胸に湧いた言葉。
「だけど、何千年も牛鬼は次から次へと交代していく過程で進化したんだ。牛の頭と蜘蛛の身体は引き継がれなくなった。その代わり、牛木となって新しい能力をもった。」
紙と筆くれとぶっきらぼうに言う有明に藍はメモ用紙とペンを渡す。
その時ふと気付いた。
先程の違和感。
有明の目が暗いのだ。
物理的に暗いというよりは、胸に抱えた不安が漏れ出ているような暗さ。


