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毛糸をぐちゃぐちゃに丸めたようなふわふわした茶髪を藍は見つめる。
顔は伏せられており表情は窺えない。
変だ。
有明の様子が、なんだか変だ。
夕食が終わってから一言も話さない。
ずっと下を向いたまま。
「藍さん?」
「えっ、あ、うん。」
紫月の声で我に返る。
早速質問したいようだ。
有明が話を聞いていたのか不安で藍は彼の肩をパシパシ叩く。
「なんだよ。」
やけに低い声で睨んでくる有明。
考え事の最中に声をかけられたことが気に食わなかったらしい。
そうこうしている間にも紫月は筆をとり話を進める。
「今回聞きたいのは三大妖怪で一番強いと言われる牛鬼の能力についてです。恥ずかしながら西文家は牛鬼の能力については記録していなかったので。」
先程までの不機嫌な様子では答えるのを渋るかと思ったが、意外にも有明はすんなりと答えた。


