千秋と藍の姿が小さく見えた。
二人の間には微妙に距離がある。
そういやあの二人仲悪いんだったな、と桜は思う。
「一応連れてきたよ。」
無言で睨み合う千秋と藍。
紫月は二人の様子にも気付かずに巻物を取り出し筆をとった。
「ありがとうございます千秋さん。藍さん、今回は少し藍さんの妖怪に尋ねたいことがあるのです。」
「有明に?」
キョトンとした顔で尋ね返す藍。
先日見た茶髪の海の怪系統の妖怪。
有明という名だったようだ。
「はい。私にはその、有明という妖怪の言葉が聞こえないので藍さんを介して話したいのですが、いいでしょうか?」
「いいけど……」
藍はチラリと自らの左隣、何もない空間を見やる。
そこに有明という妖怪がいるのだろう。
桜はそこを見つめる。
カーン、と遠くで就寝時間を告げる鐘が鳴った。


