不滅の妖怪を御存じ?




「……何?」


沈黙に耐えかねて思わず桜は話しかける。
十年間も同じその家々の継承者として会議に出席したり訓練に参加してきたのに、桜は紫月だけはどうも苦手だった。

佳那子ほど喋らないし、千秋のようにストレートに自分の意見を言わない。

簡単に言えば、彼女の性格がつかめないのだ。

女の子は本音と建前の使い分けが上手いと聞いたが、紫月の本心の見えなさはそのようなものではない。

ひたすら従順に仕事をこなす。
そこに私情は一切挟まない。
仕事仲間としては優秀だが、如何せん友達として付き合いづらい。

だからこそ、この前禁書庫について打ち明けたときの紫月は珍しかった。
あんなに疲労困憊した様子を人に見せるなど、それまでの紫月だったら考えられない。