いぐさというのだろうか。

何にせよ、竹内蛍の家は畳に使われているあの草の匂いで満ちている。
家の敷地面積はあまりに広く、蛍自身も全体を把握しきれていないほどだ。
けれども把握しきれていないのには一応訳がある。


「蛍。お前ももう六つになる。そろそろうちの家系の秘密を教えてもいい頃だ。」


あと数ヶ月で小学校に入る。
そしてなかなか話す機会のない父親と話せる最大のチャンス。
そんな、普通の六歳児であれば喜ぶような状況に、当時の蛍はニコリともしなかった。


「今日は流星群が見れるから。」


蛍の心を満たすものはただ一つ、星だけだった。
一ヶ月に一度会えるかどうか分からない両親よりも、空を見上げればいつでもそこにまたたいている星の方が彼は好きだった。

小さな足で冷たい木製の廊下を走りだそうとする蛍。
その手には小さな水筒が握りしめられている。

女中の目をかいくぐり一晩屋根の上で過ごす気でいたのだ。

蛍の父親はさっさと行こうとする蛍の小さな肩を掴む。


「まぁ待ちなさい。お前は大きくなったら竹内家の当主になる男だ。当主は家のことを知っておかねばならない。」

「当主?」

「家の代表だ。家族を守る、大事な役割があるんだぞ。」