藍たちが嘘をついている可能性もある。
判断しかねて桜たちは記録の家系、西文紫月のところへ向かった。
しかしいつもいる書庫に彼女の姿はなく、さらに色々なところを探し回ったが紫月はどこにも見つからなかった。

困り果てていたところに緊急集会の呼び出しがかかり大広間に行ってみれば紫月がいて、なんとも拍子抜けした。
しかし紫月のその顔はどこか暗く、あまりの沈んだ空気に桜たちは怒る気にもなれなかった。


「西文紫月さん。そのような、妖怪と人間との名前での従属関係が生じる記録はあるのでしょうか。」


伊勢千秋の父のその言葉に紫月はバッと顔を上げた。

その顔は真っ青で、広間にいた全員がギョッとした。


「伊勢さん。」


追い詰められたような声を紫月が出す。
こんなにも弱っている様子の彼女を見るのは桜も初めてだったので思わず凝視してしまう。


「彼女、有田藍さんが初めてこの学園に来た日、自分を育てたのは弓月という天狗だとお話ししたのを覚えておありでしょうか。」


相変わらず敬語の使い方が下手だな、と桜は思いながら紫月の話に耳を傾ける。