「お姉ちゃんの勝ち!」

 姪っ子のジャッジに彼女は手を叩いて大喜びしている。

「なっ、なんで!? ちゃんと良く見てよ!」
「だって果物を描く勝負だったんでしょ? これだと果物が端っこだし、適当にしか描いて無いじゃん」

 うなだれている彼を余所に、姪っ子はさっさと部屋から立ち去っていった。
 そんな彼とは対照的に、彼女はご機嫌だ。

「やっぱり、子供の目は確かよね?」
「……最悪だ」

 彼はソファーにボスッと座ると腕と足を組んでそっぽを向き、たちまちふくれっ面を見せた。彼の隣に彼女が腰を下ろしたことに気付くと、訝しげに眉根を寄せジロリと見下ろした。

「嫌がらせ? これ見よがしに僕の横に座らないでくれる? 我慢するのが耐えられなくなるじゃないか」

 不機嫌そうな顔でそう言うと、ふんっとそっぽを向いた。いつも一方的にやられっ放しだった彼女は、おなかを抱え込んで大笑いしている。

「ったく! ──? ……。」

 ──チュッ

 頬に温もりを感じた彼は、目を丸くしてもう一度彼女の方を振り返った。

「素敵な絵をありがとう」

 ニッコリと笑う彼女の笑顔に、顰めた眉が情けなく下がり始める。禁じられているのを忘れたのか、彼は両手を広げて彼女を抱きしめようとした。だが、彼女はするりと立ち上がると彼の腕からすり抜けていく。そのまま対面のソファーの後ろに立ち、背もたれに両手をつくと、

「貴方は私に指一本触れたらダメなのよ? 私はいいけどね」

 悪戯っぽくそう言って、彼に向ってウィンクをした。