こんなことなら手紙を無視したらよかった……。
初めてのラブレターにちょっと調子乗ってしまったんだ。


でも、無視できなかった。
あの表情や態度が私に向けられているものだと思うと、嬉しかったんだもの。

現に今、誤解してしまったこと、誤解させてしまったことに悩む気持ちもあるけれど、それ以上にがっかりしている自分もいる。


「最低すぎる、私……」


ここ1週間同じことばっかり思っている。

でも、いつまでも逃げているわけにはいかない。
返事を書こうとペンを手にして、ノートを広げて力を込める。

けれどどうしても書き込むことができない。


今日受け取ったメモを手にして、そちらに返事を書き込んだ。


“ごめんなさい、勘違いしていました。私は江里乃ではないので、このノートもお返しします。本当にごめんなさい”



胸が痛む。ヒリヒリと傷んで無性に泣きたくなる。泣きたいのは瀬戸山の方に違いないのに。


「ごめんなさい」


聞こえるはずもないのに小さくつぶやく。
悪気はなかったんです、ごめんなさい。

新しいノートはそのまま閉じて、中にメモを挟んだ。

このノートは、瀬戸山が江里乃と言葉を交わすためにわざわざ買ったもの。それに私が書き込むなんて、できない。