どっちがいい? って聞かれると、どっちでもいいよ、って言っちゃう。なにがいい? って聞かれるとなんでもいいよ、って答えてしまう。
そんなことばっかり。
瀬戸山がどんな顔をして私を見ているのか怖くて、顔を上げることはできなかった。
“そりゃそーだろ”って笑い飛ばしてくれたほうが楽かも。そう言って欲しくて、こんなことを口にしてしまったのかも。
「俺、今からジュース買ってくるんだけど」
「——…え、あ、うん」
脈絡のない発言に、肩透かしを食らった気分で顔を上げた。
瀬戸山はさっきまでとなんら変わらない表情でコインを入れ続けている。
「お前のも買ってきてやるよ、コーラとお茶とどっちがいい?」
「え? え、いや、えっと、どっち、でも」
「コーラとお茶以外ならなにがいい?」
「……なん、でも」
瀬戸山の質問に、相変わらずな答えしかできない自分が嫌になる。
これじゃダメだって思っているのに、いつもこんなことばっかりだ。
「わかった」
瀬戸山が腰を上げて、自動販売機を探しに行く。
……なんで急に、ジュースなんかを買いに行ったのかはよくわからない。ただ、自分の受け答えに落ち込む。
なんでこう、私は自分の意見が言えないんだろう。紅茶とか言えばよかったんだ。お茶かな、って選べばよかったんだ。
「はい」
数分して戻ってきた瀬戸山が、自分の分のコーラのペットボトルを手にして戻ってきて私に缶を手渡してきた。