「だって、姉と弟だもん」 それは、何の意味もないセリフだ。 だって俺たちは―― 「血は繋がってないだろ」 一歌の瞳が一瞬、揺れた。 ため息を吐き出し、聞き分けのない子供を諭すような口調になる。 「よく考えて瑞貴。あたしたちが付き合って、変な噂が立ったらどうする?」 一歌の言葉で、隣家のばばあが思い浮かんだ。 目をぎらぎらと光らせて、隣近所の噂話を嗅ぎ回っているドブネズミみたいな奴。 あんなやつ…… 「関係ないね」 そう言うと、一歌の眉が歪んだ。