――だめだよ、居間とか、台所でこういうの…… 眉を下げたまま俺を見上げる一歌は、まだきっと吹っ切れていない。 姉と弟という枠組みに囚われて、迷ってる。 他の人間にバレてはいけないと恐れてる。 そんなの、まったく問題にならないのに。 それでも不安だというのなら、できる限り歩み寄ろうと思った。 父親にバレるのが怖いなら、部屋以外では触れないようにする。 「大丈夫だよ」 リビングの真ん中に立つ一歌を見つめて、低く呟いた。 「せっかく手に入れた幸福を、みずみす逃すような真似はしない」