心臓が飛び跳ねて、俺は思わず尖った声を出していた。 「なんだよ」 覚えのない後ろめたさが俺の視線を鏡に固定させる。 弟の怒ったような声に臆したのか、すりガラス越しの一歌は一瞬口を噤んだ後、静かに言葉を零した。 「バスタオル、棚から出しておいてくれない?」 「……」 急激に込み上げる罪悪感に、俺は小さな声で「あぁ」とだけ答えた。 鏡の横にある引き出しから綺麗にたたまれたバスタオルを取り出し、洗濯機の上に置く。 そのまま濡れた手も拭かずに、逃げるようにして洗面所を飛び出した。