ふうん、と生返事をした彼女はライターを開け閉めしていた。 底に名前が入っているのに気付く。 ローマ字なら一応読める。 きしだやよい。 男の名前にしては可愛いような。 そう思いながら、カチャンカチャンと開け閉めを繰り返す。 「受験頑張れよ浪人生」 そう言って、用無しの煙草を灰皿に押し付ける。 最後に、ライターの蓋が閉まる音が響いた。 ホタルは灯らない END