こんなことなら、ちゃんと喧嘩の練習でもしておくべきだった。 あたしはいつだって、嫌なことからは逃げて。 「失せろ」 渦見の声が耳に入った。 本当にね。 失せられるのなら、遼にチョコレートを勧められる前に、失せたかった。 意識をなくす前に見えたのは、星空。 あの街では見えないものが今見えてしまうなんて、皮肉だ。