『里桜ー、このプリント配っておいて』





廊下を歩いてたら、急に後ろから声をかけられた。





「は、自分で配ってよ」





振り向いて、わざと素っ気なく返すのは、このドキドキを隠すため。





話しかけられて嬉しい。






そんな感情を隠すため。






『何だよ、ケチ。ったく可愛くねーな』






……か、可愛くない。





その言葉はズルいよ。





「あーもう。配れば良いんでしょ?」



その一言で折れてしまうなんて私ってどれだけ簡単なのだろうか。




『おう、サンキュー』





仕方がないから私は、しぶしぶプリントを受け取る。





「だから、可愛くないは取り消して」