『里桜ー、このプリント配っておいて』
廊下を歩いてたら、急に後ろから声をかけられた。
「は、自分で配ってよ」
振り向いて、わざと素っ気なく返すのは、このドキドキを隠すため。
話しかけられて嬉しい。
そんな感情を隠すため。
『何だよ、ケチ。ったく可愛くねーな』
……か、可愛くない。
その言葉はズルいよ。
「あーもう。配れば良いんでしょ?」
その一言で折れてしまうなんて私ってどれだけ簡単なのだろうか。
『おう、サンキュー』
仕方がないから私は、しぶしぶプリントを受け取る。
「だから、可愛くないは取り消して」

![[短編]初恋を終わらせる日。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.761/img/book/genre1.png)