『――っ!!!

ま、眩しい。胡陽』



漆黒の旗に金糸の龍

そのしたには龍凰の文字


神々しく、存在感がとてつもないソレ



「眩しいって…当たり前やろうがっ!!!」



「五月蝿いです、胡陽」

「確かに眩しい」

「あぁんもー胡陽黙ってよ~」

龍凰幹部…総長である龍希を始めとする四人のメンバー


そして
先程現れた胡陽は龍希を見て舌打ちをした


「龍、飯」

『?食べてねぇの?
待ってろ』


そう言って龍希が奥の総長室に入ったのを確認し


「樹杜、龍が最後に飯食ったのはイツだ?」


苛立たし気に低く訊ねる


少し躊躇いを持ちつつ樹杜は答えた
「――四日前です」

「…チッ――オレが来たときか」


暗く沈みこむ場の空気
さらに追い込むかの様に胡陽はまた訊ねる


「寝たのは?」


「六日…前から夜は何処かに」


2度目の質問にそう言って答えたのは成之



みんながみんな、自分が彼―龍希の為に何も出来ないことを知っているから

自分の無力さが不甲斐なくて仕方がない


『胡陽っ!出来たぞぉ~持ってけ泥棒っ』

暫くして、料理を終えたらしい龍希は総長室の扉を開けた

明るく振る舞う龍希だがやはり何処か翳(かげ)りがある

ソレに気付いて皆目を伏せた

『…ん?どうした?』

「何でもないよん、ねぇ?成之ぃ」

「…オレですか―まぁ、ないですね」
琥亜と成之が答える


龍希の目は観察眼とは誰が言ったのか

彼の目は普通捉えられないものを捉えたかの様に妖しく光った
『貴様ら――「うっへー、まっじうまそー」

龍希の声を遮るように興奮した様な声を出したのは胡陽

「ホントだ~!!!みんな食べよ?」


眉を顰(ひそ)めながらも呆れた様に支度を始める龍希に緊張した面持ちだった樹杜はホッと胸を撫で下ろす


「…龍希……ボクたちはまだ信用に足りませんか?
アナタの心の翳りを…まだ――話して貰えないのですか?」



樹杜の呟きは誰にも聞かれず消えていく


フザケ合う幹部たち

強引にではあったが胡陽が龍希の口に突っ込んだモノを、龍希が咀嚼(そしゃく)し始めた

それだけでも…それだけのコトでも素晴らしい進歩


当の龍希が気付かない間に



琥亜が今にも泣きそうな顔をし

胡陽は拳を握り締め

樹杜は苦し気に目を瞑って

成之は口に手の裏を当て下を向いた


みんなの心にあるのはただひとつ――