腹黒王子と意地っぱりガールの場合。

「……やーめた」

「──へっ??」



突然そう言って拘束を解いたオレに、あかりは目に見えて、疑問の表情を浮かべた。

その真っ赤なままの顔を見ながら、オレはまた、にやりと笑みを浮かべる。



「ふ。顔、トマトみてぇ」

「~~ッ!!?」

「あっれ~あかりチャン、もしかしてほんとにキスされるって、期待したのかなー?」

「ななっ、きっ、期待なんかするかバカ!! 滅べバカ!!」



足音荒く肩を怒らせながら、彼女は勢いよくドアを開いて、資料室を出た。

コーラを掴んで、きちんと部屋に施錠してから、のんびりとその背中を追いかける。



「あかりチャン顔真っ赤~、やーらしーい」

「そっ、それはあんただバカ!!」

「男がやらしい生き物なのは仕様だ。諦めろ」

「……ああそう……」



傍から見ても怒っているとわかるあかりの横に並んで、その横顔を見下ろしながら。



「……まあ、どーせなら合意の上で、したいし」

「──なに、何か言った?」

「いや、なんでもない」



こっそり呟いた言葉は、しばらくはオレだけの、秘密だ。







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