【side聖】
ヤバい、思ったより時間掛かっちゃったな。
なんて思いながら、まだまだ人で溢れ返る街中を小走りで家へ向かう。
クリスマスだからか、普段だったら開いてるレンタルショップも今日は閉まってて。
ちょっと遠くの方まで行かなきゃいけなくなった。
マリアにはどうしても頭が上がらない。普通に考えたら、小さな子のワガママなんだから断ればいいのに。
ここまでして貞子のために走る俺。
……この一言、なんか聞きようによっちゃ“貞子”っていう彼女のために走ってるように聞こえる恐ろしさ。
きっと日本中探しても、クリスマスに貞子を借りるためだけに街中を走り回る高校生なんていないんだろうな。
ほんと、情けない。
甘やかしすぎはよくないってわかってるマリアは甘やかすのに、もっと甘やかしてあげなきゃいけないってわかってる柚希にはなにもできない自分。
……はぁ。もはやため息しか出ない。
「……ただいま」
家に着いたのは、9時30分を少し回ったくらいだった。
ドアの鍵を閉めて、スリッパへ履き替えるとリビングへ向かう。
てっきり柚希がすぐに駆けて来て、『お帰りなさい!』って出迎えてくれそうな気がしてたんだけど。
……あ、いや、別に自意識過剰とかじゃなくて。
けれどそんな気色は全くなく、シンと静まり返った室内。物音ひとつしない。
不思議に思いつつ、リビングのドアを開ける。


