ぎゅーっと抱きしめ返してあげると、『わーいっ!』なんて喜ぶもんだからもうカワイすぎて失神するかと思った。
うう……よかったぁ。山田くんの妹さんに嫌われなくて。
嬉しくて、豪快に男泣きしそうだ。
「……そういえばさ兄貴、早く行かなくていいの?用事は?」
ふいに思い出したように、山田くんがお兄さんに問う。
あ、確かに。急用じゃなかったのだろうか。
お兄さんは特に慌てる様子もなく、平然と話す。
「そーそー、そうなんだよ。俺、行かなきゃいけないんだわ」
「……なにその適当な感じ」
「ちょっと聖ちゃん、そんな疑い深い目で見ちゃダーメ。心配しなくても、急用できたってのはホントだからさ」
「…………」
ケラケラ笑いながら靴を履くお兄さんの背中を、山田くんはまるで“胡散臭い”とでも言いたそうな目で睨む。
そして玄関のすぐ脇に置いてあった封筒を手に、お兄さんは立ち上がると、マリアちゃんの頭を優しく撫でた。
恐らく、あの封筒を会社にでも届けるんだろう。
「じゃあなマリア。聖おにいちゃんの言うことちゃんと聞くんだぞー」
「うんっ!桐仁おにいちゃん、がんばってね!」
「おうよ、任せなさい」
「――…………」
そうマリアちゃんに微笑みかけるお兄さんの表情が、とても優しくて。
……あぁ、なんか、いいな……こういう兄妹。


