紛れもなくあたしに注がれた視線。
想像していたものより低い声がかけられて、背筋がぴんっと伸びる。
まるで気をつけの体勢のように固まるあたしを、男の人は品定めでもするようにただじっと見つめてくる。
あ、あたし、なにか怒らせることしたかな……!?
背中に冷や汗が滲む。
どうか見逃してください……!なんて心の中で必死に祈っていると、男の人がゆっくりと口を開いた。
「……君、カワイイね」
「……、……はいっ?」
聞こえた言葉に耳を疑う。思わず聞き返してしまいそうになった。
てっきり怒鳴られると思っていたあたしは、男の人が言った言葉の意味よりも、とりあえず怒ってはいないことに胸を撫で下ろす。
……この人、もしや……?
「いやぁ~カワイイね。もしかして、聖の彼女?」
「あっ、は、はい!立本柚希と言います!」
勝手にお邪魔してすみません!と頭を下げる。
「いやいやそんなかしこまらなくていいよ。俺も、柚希ちゃんみたいなカワイイ子に会えて嬉しいしさあ~」
「は、はい……?」
ここは頷いていいのだろうか。
ニコニコと話してくれる男の人。
やっぱりこの人……。
「なんなら、毎日ここに来てもらってもいいんだよ?」
「……あの、もしかしてあなた……」
「……おい兄貴、近い」
もしかしてあなた、山田くんのお兄さんですか?
そう尋ねようとしていたあたしの声を遮り、立ち上がった山田くんの低い声が答えをくれた。
あ、やっぱりこの人、山田くんのお兄さんの桐仁さんだったんだ!


