どうしようどうしよう、なんてひとり右往左往していたあたしは、遠慮がちな山田くんの声にハッと現実へと戻ってくる。
「どうしたの、山田くん?」
「……あのさ……」
「……?」
―――――……
―――……
――…
「……へっ?お兄さん?」
電話を切った山田くんは、スマホをズボンのポケットにしまいながらあたしの問いに頷く。
「そう。急に家を空けなきゃいけなくなったらしくて、妹の面倒見て欲しいんだって」
「だから、家に戻らないといけないと?」
「うん」
山田くん、お兄さんと妹さんがいたんだ。
山田くんの話によると、今お兄さんから電話があって、急に家を出なければならなくなったらしい。
だから、家にひとりぼっちになってしまう妹さんの面倒を見てあげて欲しいと。
ちなみに山田くんのご両親は、ふたりで旅行に行ってしまっているらしい。
ていうか、山田くんにお兄さんと妹さんがいたなんて初知りでビックリだ。
おそらく美男に美女なんだろうけど、なんだか意外だなぁ……。
「……ごめんね、柚希」
「えっ!?ううん!全然!いいよいいよ!」
申し訳なさげに謝る山田くんに、あたしはぶんぶんと首を振る。
だって、それなら仕方ないよ。
デートが終わっちゃうのはさみしいけど……妹さんの方が、大事。
笑顔で受け入れるあたしに、山田くんはもう一度『ごめんね』と呟いた。


