滅多に現れないS山田くんの笑顔に勝てるはずもなく、敗北感にさいなまれながらも親方に話しかけちゃってる可哀想なあたくし。
そんなあたしを慰めるかのように、親方は瞑っていた目をうっすらと開けて『んなぁ~』と鳴いた。
……くっ。やっぱりカワイイぜ。
ひとり悶えるあたしの横で、山田くんが太股に肘をついて頬杖をつきながら口を開く。
「……柚希はあくまで日本語なんだね」
「へっ?」
「……いや、大体の人ってさ、猫に話しかけるとき“にゃー”で会話するでしょ?にゃーにゃーとか」
「……っ!?」
なっ、なな、なななな!?
あたしの目前には、普段と変わらず無表情な山田くんの姿。
だけど、その口から、その声で、今、『にゃーにゃー』って……!
しかも頬杖をついてるから上目遣いきたぁぁぁぁぁぁぁ!!
「……え、なに。なんで鼻おさえてるの」
「鼻血が出ないようにです」
「どこかぶつけた?」
「くっそ録音すればよかったぁぁぁーーーっ!!」
「人の話を聞け」


