ぐっ、と唇を噛み締める。
溢れ出してくる何かに、視界が歪んでしまいそうだ。
なおも語り続けるおじさんの横顔を、真っ直ぐに見つめる。
「その男の偉いところは、“合格を頼む”訳ではないとこだ。
そういう受験関連で来る大半の参拝者は“無事合格できますように”って願うもんだ。だが、ヤツは違った。
“彼女が受験に合格できますように”ではないんだ。頑張るのは彼女自身だって、そういうことは、神様に頼むことじゃねぇってわかってるんだよな」
「――……」
「よく出来た男だー、アイツは」
――ポロっ、と。
涙が一粒、落ちた。
どうしてかわからないけれど、何かが胸から溢れ出す。止まらない。
そんな私に一瞬視線を寄越すと、おじさんはふっと微笑んだ。
「あっ、そういやぁ今日はいつもより随分と早く来たな。『これから彼女とデートなんすよ』って。
いやぁー、まるで子供みたいな笑顔だったな」
そう言ってガハハッと笑ったおじさんに、私は目を見開いておじさんの腕を掴んだ。


