『要くんなんて大嫌い』
「あんな一言で台無しにするなんて……馬鹿みたいね」
本当はそんなこと、微塵も思っていないのに。
だって、悲しかったんだ。寂しかったんだ。
要くんが好きだから。大好きだから、要くんにだけは、“伊吹スミレ”を見て欲しかった。
“受験生”ではなくて……。
「……~~~っ」
だからつい悲愴な思いに支配されて、怒鳴ってしまったけれど。
「……悪いのは、全部私なんですぅぅぅ~……っ」
ぼろぼろと零れ落ちる涙。
溢れて、溢れて、止まんなくて。
嗚咽混じりに泣きじゃくる私に、それまでずっと黙って聞いていたおじさんが、そっと口を開いた。
「……お嬢さんはさっき、“こんな石段の多い神社に参拝者なんているのか?”て、言ってたが」
「……え?」
「いるんだよー、物好きなやつは。例えば、高校生の若造なんだがな」
そこまで言うと、おじさんは歯を見せてガハハッと笑った。


