『そんな大事な時期に、薄着で外出て風邪引いて、全部ダメになりましたー、なんてことになったら、それこそ馬鹿みたいじゃないですか』
――せっかくここまで頑張ってきたんだから、その努力を風邪なんかで全て台無しにするなんて、もったいないでしょ?
あの言葉の裏には、きっと、こういう思いがあったんだと思う。
でも、あのときの私はそれどころじゃなくて。
“受験生”“受験生”って、“受験生である私”ばかり見る要くんに腹が立ったんだ。
腹が立つと同時に、とても悲しくなった。
私はただ、今日だけは受験のことを忘れて、要くんと普通にデートがしたかった。
付き合った当初から、私の周りはとっくに受験一色で。
ぎりぎりまで期間は伸ばしたけれど、それでも、付き合って1ヶ月後にはラインやメール、電話、デートはぱたりとしなくなった。
というか、ふたりで決めて止めた。それが正しい。
たった1ヶ月。されど1ヶ月。
受験生にとって、その1ヶ月は何年分にでも相当する。
私は猛勉強の日々を送っていた。そして、明日からもまた、合格するまで延々と続く。
そんな生き地獄のような窮屈な生活のなかで、要くんだけが私のヤル気の源だったんだ。
学校でも階が違えば会うことは皆無に等しい。
たまに階段ですれ違えたときは、嬉しくて、思わず抱きつきそうになってしまうほどで。
ここ数週間、要くんにクリスマスデートのお誘いを受けたときから、今日のこの日を楽しみに乗り越えたと言っても過言ではない。
それぐらい楽しみで楽しみで仕方なくて、どうしようもなかったはずなのに。


