「そこのお嬢さん」
「……え?」
耳に届いた、少ししゃがれた、でも人の良さが滲み出たような声に顔を上げる。
そこには、こちらに向かって微笑む袴姿の小太りなおじさんが立っていた。
私?
小首を傾げつつ自らを指差した私に、笑みを深めて数回頷いたおじさん。
笑ったときにできる目尻のシワと、貫禄たっぷりな太い眉毛が印象的だ。
恐る恐る、おじさんに近寄る。
「なんでしょうか?」
「お嬢さん、何かあったみたいだね。酷い顔だぞ。パンダみたいだ」
ぱっ……。
反射的に顔を両手で覆った私に、ガハガハと豪快な笑い声が降ってくる。
そそそそりゃ、メイクも落ちて目元真っ黒だろうけど、そんなはっきり言わなくてもいいじゃない……!
羞恥で赤くなった顔。
そんな私に、おじさんはやっぱり笑うばかりで。
街から外れたこの場所は静かで、おじさんの笑い声がよく響く。


