――あ……。
ひとつの考えに行き当たって、反射的に六花ちゃんを見た。
そこにはまるで、俺が次に口にする言葉をわかっていたかのように、悲しげに微笑む六花ちゃんの姿があって。
言い様のない感情が、身体中を駆け巡る。
色んな想いが交錯して、軽く目眩がした。
『……ごめん』
――それが、今年の9月。
俺が六花ちゃんをフったときの話。
“どっちの方が、楽しいのかな”
“足踏みって、楽しい?”
……あのときの俺は、自ら立ち止まることを選んだ。
前に進もうと、足踏みを越えて、一歩。俺の心へ踏み出してきた六花ちゃんを遠ざけて。
このとき発した“ごめん”は、いったいどちらの意味で言ったのか。
告白に対しての、気持ちに応えられなくてごめん?
それとも、真っ直ぐぶつかって来てくれた六花ちゃんを拒否して、立ち止まることを選んだことに対してのごめん?
それは、何度当時を振り返ってみてもわからないけど。
だけど、今は……。


